TechCrunch 2018 優勝!Muscaの評価
今回はTechCrunch Tokyo 2018の優勝者の、昆虫スタートアップ株式会社ムスカ(Musca)を評価していきます!
Indii | もっと詳しく。もっと楽しく。
というサイトを作りました!ぜひご覧ください!
1. 「Musca」とは
45年1100世代におよぶ選別交配を重ねたイエバエの幼虫を使って、有機廃棄物を飼料と肥料に変えるテクノロジーを提供しています。
2. サービスのカテゴリー
昆虫、肥料、飼料
3. 背景
現在、世界中で畜産の飼料に魚粉を用いますが、この魚粉も天然資源であり有限で生産量もばらつきがあります。ムスカは、人口増加によりこれからますますニーズが拡大していく畜産や養殖を支えるために必要不可欠な魚粉の代替物を提供することで天然資源の枯渇を防ぐとともに、副産物である肥料による農作物の収量アップなどを通じ、世界の食糧危機の解消に貢献します。また、日本では食品廃棄物だけで年間2800万tも出ており、現状処理や堆肥肥料の需要が追いつかないということもあり、日本国内の倉庫には処理待ちの食品廃棄物が溢れかえっています。
4. ニーズ
この3つの背景(飼料問題、肥料問題、ゴミ問題)から生まれる、
・魚粉よりも安定した飼料がほしい!
・人口増加にともなう食料問題を少しでも解決したい!
・溜まったゴミを何とかして欲しい!
・環境に優しい方法で、飼料や肥料を作りたい!
といったニーズをMuscaは解決しています。
5. ターゲット
Muscaの顧客は主に、
・飼料会社
・肥料会社
・生ゴミ、畜産糞尿を扱っている会社
などの学生がメインです。
6. ターゲット市場
Muscaが狙う市場は3つあると考えられます。飼料市場、肥料市場、バイオマスリサイクル市場の3つです。以下がそれぞれの市場の大きさです。
- 飼料市場 10.4兆円(2015)⇨19.3兆円(2021)
- 肥料市場 11.0兆円(2015)⇨13.8兆円(2021)
- バイオマスリサイクル市場 200兆円(2015)⇨300兆円(2021)
世界単位であるとは言え、とても大きな市場です。
7. サービス内容
まず、生ゴミや畜産糞尿にイエバエの卵をまきます。それから一週間放置するだけで、イエバエの幼虫が動物の排泄物の分解と乾燥を促進し、イエバエの排泄物がでてきます。そして、幼虫は鳥や魚の飼料に、排泄物は高規格な肥料となります。
8. ビジネスモデル
幼虫は飼料会社、排泄物は肥料会社に販売します。元となる生ゴミや畜産糞尿も、本来は厄介者なので、仕入れることで利益がでます。これらを、全てプラント上でやるっぽいです。プラントに関しては、ムスカがオーナーになるのではなく、利益分配性で、違う人がプラントを買って、ムスカはイエバエだけを提供するというスキームです。要するに、持たざる経営を目指していると言えるでしょう。1プラントあたり、1億円/年の利益が出る予定で、日本国内では3,000箇所以上、世界では200,000箇所以上を目指すらしいです。飼料の価格に関しては、本来魚粉がキロ単位150円なのに対して、キロ単位100円で提供することを目標としています。
9. 競合
直接的な競合としては、ミズアブを使ったオランダ企業のprotixや、ニクバエを使った南アフリカ共和国のAgriProteinなどが挙げられます。AgriProteinはビルゲイツと彼の奥さんが作った財団が投資しているスタートアップでもあります。意外と似たような企業があるのだなというのが、正直な印象です。他の昆虫を使った競合としては、栄養価の高いコオロギを使ったスタートアップが有名だと思います。カナダのEntomo Farmsは、コオロギを飼料用にも食用にも販売しています。確か、日本にも大学発ベンチャーでコオロギを扱っているところがあったと思います。
10. 差別化要素
これら競合と比べてのMuscaの一番の強みは、その生産効率にあり、Musca自身もその公言しています。ムスカが提供するイエバエの飼料への変換率は、10%であり、その生産サイクルも7日間となっています。先ほど挙げたAgriProteinは、返還率は5.4%、生産サイクルは10日間らしいです。ここの生産効率がムスカ最大の強みでしょう。
11. 現時点での進行度
ムスカは2016年に設立したばかりということで、資金調達もまだまだです。そのため、現時点で数10億円の資金調達ラウンドを実施している途中で、早ければ今年度中に第一号生産施設の着工を始める予定らしいです。
12. 新たな挑戦
おそらく、このビジネス単体で相当な価値があるので、違う領域に参入する必要はないかとおもわれます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以上がMuscaの概要です!ここからは、Muscaを五段階評価していきます!
将来性 (需要の高まりが期待できるか)
★ ★ ★ ★ ★
新規開拓性 (今のサービスを軸に他の領域に進出できるか)
★(必要なし)
独自性 (模倣可能性が低いか)
★ ★
持続性 (全てのプレイヤーが継続的にサービスを使うか)
★ ★
ビジネス性 (儲かる仕組みか)
★ ★ ★ ★ ★
やはり、圧倒的な技術力と完璧なビジネスモデルはとてもすばらしいです。特に、こんなに綺麗なビジネスモデルは私自身見たことがないです。そして、これに市場のポテンシャルを合わせたら、とてつもなく将来有望な企業であるとも言えます。
ただ懸念点も二つあります。
一つが、ビジネスモデルのスキームについてです。ビジネスモデルのところで述べたように、ムスカは持たざる経営を目指しています。それは、逆にプラントのオーナーが大変なリスクを負ってプラントを買う必要があるという意味でもあると思います。要は、Muscaの技術は世界水準で戦う必要がある複雑ものであるがゆえに、オーナーには相当な先見の明が求められる可能性があるのです。だとするならば、このスキームは持続性にはかけるかなと少し思いました。
二つ目が、独自性についてです。正直細かい技術のことについてはよくわからないのですが、AgriProteinなどの世界の企業と同じ土俵で戦えるくらい生産効率の高さは魅力的なのかという点です。
TechCrunch優勝者ということもあり、未来に期待です!頑張って世界的な企業になって欲しいです!
もっと詳しくいろんなサービスを知りたい人向けに、
を作りました!ぜひご覧ください!
みなさんの意見もお聞きしたいです!何かあれば、コメント欄にお願いします!